多くの開発者は、App Store の掲載情報を一度だけ英語で設定したら、そのまま放置してしまいます。しかし、上級の ASO チームは、App Store のローカライズの仕組みそのものをキーワード拡張のシステムとして活用します。潜在的にカバーできるキーワードの量には、両者で雲泥の差が生まれます。
これはグレーゾーンでもなければ、抜け穴を突く手法でもありません。Apple が明確に認めている方法です。この戦略はクロスローカライゼーションと呼ばれ、AppTweak、Phiture、Appfigures をはじめとする主要な ASO リサーチ企業がすべて、意図的に仕込んだテスト用キーワードを使って実証してきました。
App Store が実際にローカライズをインデックスする仕組み
どの国の App Store でも、Apple はプライマリ言語のメタデータだけをインデックスするわけではありません。同じ国向けに設定された複数のセカンダリローカライズからもキーワードをインデックスします。米国 App Store の場合、その対象には次の 10 のローカライズが含まれます。
- 英語(米国):プライマリの掲載情報
- アラビア語
- 中国語(簡体字)
- 中国語(繁体字)
- フランス語
- 韓国語
- ポルトガル語(ブラジル)
- ロシア語
- スペイン語(メキシコ)
- ベトナム語
各ローカライズには、それぞれ 100 文字のキーワードフィールドに加えて、タイトルとサブタイトルが用意されています。キーワードフィールドだけでも、米国市場向けに 10 × 100 = 1,000 文字分の潜在的なキーワードスペースが手に入ります。実際には重複排除のルールがあるため、現実的な上限は実効で 800 文字前後です。
「犠牲」戦略
ここが核心です。Apple は、各ローカライズにその言語のネイティブな表現を書くことを義務付けていません。ロシア語のキーワードフィールドを英語のキーワードで埋めても構いません。フランス語のキーワードフィールドを英語のキーワードで埋めても構いません。セカンダリローカライズは単なる「枠」であり、そこに何を入れるかはあなた次第なのです。
「犠牲」という言い方は、このトレードオフに由来します。ロシア語のローカライズを英語のキーワードで埋めれば、ロシアの App Store でのオーガニックなランキングの可能性を犠牲にする代わりに、米国 App Store で英語キーワードを約 160 文字分多く確保できます。欧米市場を狙うほとんどのアプリにとって、これは明らかに割の良い取引です。
必ず守るべきルール
クロスローカライゼーションには、無視すると戦略が台無しになる 2 つの厳格な制約があります。
- ローカライズをまたいだ重複は禁止:Apple は、ローカライズの各枠に何度出現しようとも、ユニークなキーワードの語幹を 1 回しかカウントしません。「tracker」が EN-US のキーワードと FR のキーワードの両方に出現していても、評価されるのは 1 回だけです。重複排除は完全に行われます。
- キーワードはローカライズをまたいで結合されない:「habit」が EN-US の枠にあり、「tracker」が FR の枠にある場合、「habit tracker」ではランクインしません。各ローカライズは、それ単体で完結した意味のあるキーワードの組み合わせを構成しなければなりません。
2 つ目のルールは、最も誤解されやすいポイントです。2 語のフレーズを 2 つのローカライズに分割して「スペースを節約する」ことはできません。その組み合わせでランキングシグナルを生み出すには、フレーズが単一のローカライズ内にまとまって出現している必要があります。
掲載情報内の各フィールドの重み付け
クロスローカライゼーションのキーワードマップを構築する前に、各ローカライズ内での重み付けの優先順位を理解しておきましょう。
- タイトル(30 文字):ランキングへの影響が最も大きい。先頭に近い単語ほど、末尾の単語より重く評価されます
- サブタイトル(30 文字):中程度の重み。2 番目に強いキーワードフレーズに使いましょう
- キーワードフィールド(100 文字):重みは最も低いものの、最大の枠。タイトルとサブタイトルのテーマを補強する語彙として扱いましょう
重要:タイトルやサブタイトルにすでに含まれている単語を、キーワードフィールドで繰り返してはいけません。繰り返してもランキング上の追加メリットはゼロで、文字数の予算を無駄にするだけです。キーワードフィールドには、ほかで使っていない新規の語のみを入れましょう。
実践例:米国 App Store をマッピングする
米国市場をターゲットにした生産性向上アプリのために、クロスローカライゼーションを構築する場合を考えてみましょう。EN-US の掲載情報でプライマリのキーワードクラスターをカバーします。これを次のように拡張します。
- ES-MX(スペイン語・メキシコ):「organizador de tareas」「lista de pendientes」のような本来のスペイン語キーワードを使いましょう。米国にはスペイン語を話す大きな層が存在し、狙う価値があります。この枠は犠牲にしないでください
- RU(ロシア語):セカンダリクラスターの英語キーワードで埋めます。EN-US に入りきらなかった用語を入れましょう
- FR(フランス語):さらに英語キーワードを。ほかで使っていない 3 つ目のクラスターの用語を入れます
- KO、AR、VI:これらの市場がターゲットでないなら、英語のロングテール用語の拡張に使いましょう
- ZH-HANS、ZH-HANT、PT-BR:犠牲にする前に、これらの市場をネイティブに狙う価値があるかどうかを見極めましょう
EN-GB という落とし穴
クロスローカライゼーションで最もよくある誤りの 1 つが、米国向け戦略に EN-GB を加えてしまうことです。EN-GB は米国 App Store ではインデックスされません。英国のストアフロント、オーストラリア、その他の英語圏市場ではインデックスされますが、米国では対象外です。米国でのキーワードカバレッジを広げようとしているなら、EN-GB は何の役にも立ちません。
とはいえ EN-GB は、英国やオセアニア市場向けの独立した戦略として維持する価値があります。米国向けの最適化と混同しないようにしましょう。
キーワードマップを長期的に維持する
クロスローカライゼーションでは、複数の App Store Connect のページにわたってキーワードが分散します。管理の仕組みがないと、アップデートの際にうっかり重複を混入させてしまいがちです。特に、プライマリの EN-US キーワードを変更したのに、セカンダリの枠との重複を監査しなかった場合に起こりやすくなります。
すべてのローカライズのすべてのキーワードを 1 つのビューで一覧できる、マスターのキーワードスプレッドシートを作成しましょう。アップデートを行う前に、必ず重複チェックを実行します。ここが戦略の中で最もミスが起こりやすい部分であり、多くのチームが最終的に自らのキーワード設計を崩してしまう箇所でもあります。